コンサルキャリアで最も特筆すべきことは、「ネクストキャリアを見越した入社」の方が多いことでしょう。
そして、コンサルに入社した方の多くが直面するのが、以下のような問いです。
- いつファームを去るべきか
- コンサルを経由したからこそ行けるネクストキャリアはどこか
- 年収の増減をどう捉えるか
本シリーズでは、実際にコンサルを卒業してネクストキャリアを歩まれる方々にインタビューをし、ポストコンサルキャリアの実録を集めていきます。
実録:働き方に違和感を覚えたとき、キャリアは一度立ち止まっていい
ITコンサルとしてキャリアをスタートし、環境を変えながら経験を積み重ねてきたKさん。順調に見える道のりの中で、彼は「この仕事は、自分の成長につながっているのか」と自問し続けてきました。
IT偏重への違和感、長時間労働とモチベーションの関係、そしてキャリアを閉じないための選択。本記事では、一人のコンサルタントが環境を選び直しながら、自分なりのキャリア軸をつくる過程をひも解きます。
働き方への関心が導いた、コンサルとしてのキャリア
Kさんがコンサルティング業界に足を踏み入れた原点は、「働き方」への関心でした。
2017年に大学を卒業し、最初に入社したのはアクセンチュアです。就職活動の段階では、コンサルティングファームに絞り込んではいませんでした。人材業界にも興味を持っており、「働き方そのものを変えられる仕事って何だろう」と考えていたといいます。転機になったのは、アクセンチュア出身の大学OBから届いた一通の連絡でした。
OBから伝えられたのは、「人の働き方に興味があるなら、人材と業務のマッチングを担う人材会社よりも、業務そのものを変えられるコンサルのほうが向いているかもしれない」という視点でした。この言葉が腑に落ち、Kさんは業務改善やビジネスプロセスに関わるコンサルタントとしての道を選びます。
入社後に配属されたのは、通信・メディア・ハイテク領域を担当する部門です。当時はシステム導入プロジェクトに携わり、業務を通じてITプロジェクトの基礎を学びました。その後は、市場調査や販売戦略といった、より上流のテーマも経験を積みます。
「最初はシステム導入が中心でしたが、徐々に市場調査や戦略寄りの仕事も経験できるようになりました」と、仕事の幅が広がっていったと語ります。
また、当時のアクセンチュアには明確な残業管理の方針があり、Kさんの所属部署は月45時間以内に留まっていたと振り返ります。
正直、すごく長時間労働でハードだと感じたことはあまりなかったですね。残業時間は多くても月20〜30時間程度。ただし、システム導入の山場では夜間対応が必要になることもあり、シフトを組んで深夜にテストを回して、朝方に帰ることもありました。
こうしてKさんのコンサルキャリアは、比較的安定した環境の中でスタートしました。一方で、働きやすさの裏側で、徐々にある違和感も芽生え始めます。それは、日々の業務を通じて見えてきた、自身のキャリアの向かう先でした。
IT偏重への違和感と、ピュアなコンサルを求めてデロイトへ
アクセンチュアで働くにつれて、Kさんには違和感が蓄積していった、と振り返ります。その要因は、IT案件の偏りでした。所属していた部門では、業務全体の7割ほどがIT関連プロジェクトを占めており、Kさん自身もシステム導入やテスト工程に深く関わることが多かったと振り返ります。
正直、アクセンチュアにいた頃は、いわゆるコンサルっぽいパワーポイント資料を書く機会がすごく少なかったんです。システムのテスト環境を触ったり、エクセルで検証作業をしたりする時間のほうが圧倒的に長かったです
IT案件ではバッファが組まれていたり、リスケジュールが可能だったりと、プロジェクト運営の余裕を感じる場面も多く、刺激という意味では物足りなさを覚えるようになっていました。
このままだと、キャリアがどんどんIT寄りに固定されていくイメージが強かったんです。SIerっぽくなっていくのは、正直ちょっと違うなと感じていました
その道を進み続けた先に、自分が本当にやりたい姿があるのか、次第に疑問を持つようになったのです。
社内異動や公募制度という選択肢も頭をよぎりましたが、「異動異動先のテーマに関する経験がない状態で応募しても、なかなか希望は通らないだろうな、という感覚がありました」と、現実的な判断をしています。
実際、周囲にも同じような悩みを抱える同期や先輩が多く、「関連プロジェクトに当たれば道は開けるけれど、運の要素も大きい」と感じていたといいます。こうした背景から、Kさんは転職を考え始めます。明確に重視したのは、よりピュアなコンサルティング業務に携われるかどうか、そしてITに限らないプロジェクトの種類があるのか、の2点でした。
最終的に選んだのがデロイトでした。
一番、案件のジャンルが多そうに見えたのがデロイトでしたし、当時は一番勢いがあるようにも感じました
実際に入社してみると、その印象は大きく外れてはいませんでした。アクセンチュアと比べると、現場でのインテグレーション業務は少なく、企画や構想といった上流フェーズに関わる機会は増えました。
ちゃんとプレゼン資料を作って、クライアントと議論する。いわゆるコンサルらしい仕事は、デロイトのほうが圧倒的に多かったですね
一方、デロイトでは多くの職位が裁量労働制となり、残業も増えていきました。
「プロジェクトの繁忙期には、非常に密度の高い働き方が求められ長時間労働が続くこともありました」と、厳しさも率直に語ります。ただ、それでも当初は「今までやりたかったコンサルの仕事ができている」という実感があり、納得感を持って走り続けていました。
走り切った先で立ち止まった理由
デロイトでの仕事は、Kさんにとって「求めていたコンサル像」に近いものでした。一方で、その充実感と引き換えに、働き方は想像以上にタフなものになっていきました。裁量労働制のもとでは、時間管理は個人に委ねられます。
一定期間思い切り働くのはいい経験になりますし、それ自体が悪いとは思っていませんでしたが、それが続いたときに、自分の中で何が支えになるのかを、次第に考えるようになりました
次第にKさんのモチベーションの源泉は「成長実感」だったと気づきます。
長く働いた結果、自分の能力が上がっている、将来の選択肢が増えている、という感覚があれば、たぶん続けられたと思うんです。でも、プロジェクトを重ねるにつれて、量をこなす場面が増え、前進している感覚が薄れていきました。このまま同じペースで働き続け、モチベーションを保てるか、と考えると難しいなと思い始めました。
一緒にやりたいと思える人と働けているときや関心のあるテーマならば頑張れるんですけど、そうじゃないときに、長時間労働が重なると一気にしんどくなる
その感覚は、決して一時的な疲れではなく、働き方そのものを見直すサインだった、と振り返ります。この時期、Kさんは一度、コンサルティング業界を離れる可能性も真剣に考えました。
さらに・・・



