「生成AIを習得してキャリアアップしました!」
「ChatGPTを使って、仕事が一瞬で完了!」
SNSや広告で見かける、このような宣伝文句。しかし、「生成AIを習得すれば自分自身の市場価値が向上してキャリアアップにつながる」と安易に考えていませんか。
はじめまして、私はAIコンサルタントのマスクド・アナライズと申します。AIスタートアップを経験して、現在は独立してAIコンサルタントとして活動しています。
生成AIは既に企業での導入も進んでおり、仕事で活用している人もいるでしょう。生成AIを習得して転職や仕事の効率化などのキャリアアップを期待するのもわかります。
しかし、私はSNSで語られるキラキラした成功譚と、企業が直面する泥臭い現実のギャップを毎日のように見ています。
そこで本記事では生成AIに憧れるビジネスパーソンに、市場価値との関係性についてアドバイスさせていただきます。
どんな仕事も一瞬で片付く「魔法の杖」ではない、生成AIの現実
SNSや動画投稿サイトにおいてどんな仕事も一瞬で片付く「魔法の杖」のように語られがちな生成AIですが、現場の現実は異なります。専門的または複雑な作業には限界がありますし、回答に間違いもあります。まだ利用できる場面は限られており、成果も限定されます。
とはいえ、「文書作成の補助」や「アイデア出し」「社内問い合わせ対応」といったサポート業務では、その便利さから徐々に利用が広がっているのも事実です。
では、ビジネスパーソンが便利な生成AIを使いこなせるようになれば、キャリアアップも可能でしょうか。
確かに、SNSやビジネス誌の特集記事では、生成AIを活用した仕事の効率について解説されています。インターネット上で様々な情報を短時間で調べて、長文のレポートや、きれいな提案資料、イメージに合わせた画像を生成する……。
こうした使い方は機能としては可能ですが、ビジネスパーソンが使いこなすには、いくつかの「壁」に直面します。
1.コストの壁
2.セキュリティルールの壁
3.指示命令の壁
1.コストの壁
ここで考えるべきは、こうした生成AIの便利な活用法が自分の業務でどれだけ影響するかです。普段から調べ物やレポート作成などの業務が多ければ、一定の効果が見込めます。しかし、このような便利な機能は、回数制限があったり、有料版への課金が必要だったりします。提案資料や画像の生成には試行錯誤も必要なので、使いすぎれば相応の費用がかかります。これでは費用対効果が見込めません。
そのため、社内で提供されている生成AIツールには予算の都合で機能制限がかかっている場合もあります。
2.セキュリティルールの壁
では、個人的に生成AIツールを使えば良いのでしょうか。
その前に社内ルールに注意してください。生成AIなどの外部ツールについて、会社の業務では利用が制限されている場合もあります。これには生成AIによる間違った回答の見落としや、社内情報の入力のよる外部情報漏えいを防ぐためです。
実際に、生成AIツールを導入している企業では「生成AIによる回答には必ず確認作業を入れる」「そのまま上司や取引先に提出することは禁止」といったルールが徹底されています。
これらのルールは対策として事前に決められています。業務においては個人情報や機密情報を扱う場面もあり、安易に生成AIを使えないことは覚えておいてください。
3.指示命令の壁
2つの壁を乗り越えたとしても、業務効率化を実現するには、生成AIツールの使い方を習得して指示や命令を的確に行わなければいけません。こうした指示や命令がうまく出せず、求める答えが得られないために「生成AIは役に立たない」と判断し、次第に使わなくなってしまう人もいます。
また、生成AIツールを使うべき場面や用途をうまく選定できないと、効率化は実現できません。決められた同じ作業の繰り返しなどは生成AIが得意ですが、その作業に必要な手順を人間が明確にするなど、準備が必要です。そのため準備に手間がかかりすぎたり、精度が低かったりすると、自分で行ったほうが良かったという結果になってしまいます。
個人が生成AIツールを使いこなすメリットはあるものの、同時に様々な条件も必要になる点は注意が必要です。
生成AIを習得すれば転職でキャリアアップできる?
さまざまな壁を乗り越えて、生成AIのスキルを獲得した、としましょう。「この新しいスキルを武器に、もっと良い企業へ転職したい」。そう考えるのも自然なことです。しかし、ここにも大きな誤解があります。
実際に生成AIに関連する転職事例もありますが、上手くいくかは別問題です。
さらに・・・




