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「銀行辞めて、どうですか?」辞めた人たちの本音を集めて、SMBCの人事に凸してみた

「銀行」ってどのようなイメージをお持ちでしょうか?


「給料が高そう」「エリートっぽい」一方で、「古い」「年功序列」などのお堅いイメージもあると思います。


最近は「銀行から人が辞めている!」というニュースもあります。実際はどうなんでしょうか。退職した人はなぜ辞めて、今はどのようなことをしているのでしょうか。


そんな実態に迫るべく、銀行の退職者にアンケートを取りました。そしてなんと今回、そのアンケート結果を持って株式会社三井住友銀行(以下、SMBC)の現役の人事部員に突撃する企画がおそらく日本で初めてできてしまいました(絶対断られると思った)。


中の人は、若手の離職や年功序列について、どう思っているのか。そして、ドラマで描かれるような世界は本当なのか。人事部で新卒・キャリア採用を担当されている矢野遼介さんに実態を教えてもらいました。








卒業生が本音で教えてくれた。「ぶっちゃけ、何で辞めた?」


寺口:今日はSMBCを卒業した皆さんから、「退職理由」「転職先」「銀行での経験は役に立っているか」などを中心に本音を集めてきました。なかなか辛辣(しんらつ)な意見もありましたが、心の準備はよろしいでしょうか?


矢野:はい……大丈夫です! よろしくお願いします!


寺口:では、早速見ていきましょう。





寺口:アンケートでは「ぶっちゃけなんで辞めたんですか?」と卒業した皆さんの本音に迫ってみました。まず目立ったのが「影響力を持つポジションに就くまでに相当な時間がかかる」「20代のうちに管理職になるのは物理的に難しい」といった年功序列の制度に関するものでした。


矢野:管理職になって部下を持つとなると、確かに20代ではほとんどないですね。30歳の管理職が今のところ最年少かと。





寺口:2021年に退職した方の回答では「年功序列に重きを置いた組織文化」という言葉も出てきています。


矢野:これは正直、耳が痛いですね。確かに、20代のうちに管理職経験が積めないというのは、世間的には遅れている部分かもしれません。ただ、当行でも管理職への早期登用の動きはあります。さらに、給与の面でいうと逆転現象は起きていて、年次が上だからといって必ずしも給与が高いとは限りません。


寺口:年収は逆転していることもあるんですね。年功序列のイメージを覆すような事例ってありますか?


矢野:すでに35歳で支店長をされている女性社員がいます。その方の直属の部下である課長は年上ですし、銀行の支店長は40~50代でベテランの男性というイメージを持たれるのが当たり前だったので、変わってきている事例の一つです。



年功序列は改善中、一方「裁量」は異議アリの実態


寺口:回答に多かった「裁量が小さい」というコメントはどうですか?


矢野:すみませんが、これは異議アリですね。当行では「影響力を持つポジション=管理職」ではありません。20代の担当者も自身の業務での裁量はありますし、むしろ一つひとつの仕事の責任は重いです。


例えば、法人営業であれば、多くの行員が新卒2年目から担当のお客さまを担当します。コミュニケーションを取る相手が社長であることはもちろん、その会社の経営課題の相談や存続するための融資に関する相談を受けることもあります。案件によってはお客さまの命運を握るキーになることも。このような意味での裁量や責任は非常に大きいと思います。





寺口:「配属や上司次第でキャリアに大きなリスクが生じる」という声もあります。最近は「配属ガチャ」という言葉もありますが、社員個人のキャリアプランについてはどのようにお考えでしょうか?


矢野自分でキャリアを選べるような制度を整えています。例えば、年2回の公募制度でやりたい仕事がある人や、海外勤務を希望する人がエントリーできる仕組みがあります。直近ですと、2022年7月の公募では約500人の応募があり、約半数の人が希望した配属先に異動しています。


こうした公募制度を支える仕組みとして、年1回の「SMBCジョブフォーラム」というSMBCのグループ内での合同部署説明会を実施して他部の仕事を理解する場があります。


寺口:それは具体的にどのような取り組みなんですか?


矢野:SMBCの他、例えばSMBC日興証券やSMBC信託、三井住友カードなどグループ各社が参加して、各社の各部署がどのような仕事をしているのか、どのような人が働いているのかなどを紹介するオンラインのイベントです。


他にも社内向けに部署紹介サイトを用意しています。興味がある人は、それらを見て業務イメージを固めてからエントリーするという流れです。異動先は他部やグループ内なのですが、業務内容が大きく変わるケースもあるため、感覚的には転職に近いと思います。



金融よりもIT、コンサル、意外に多いSMBCから異業界への転職


寺口:次は、「SMBCを退職した人たちがどのような転職先を選んでいるか」です。





寺口:回答で意外に多かったのがITやコンサルなど異業種への転職でした。金融はIT、コンサルに次いで3番目となっています。その他には、ベンチャーキャピタルや不動産、アパレル、さらに起業した人やMBA留学した人もいますね。


矢野:この結果は、違和感なく受け止めることができました。転職先として相性が良いのは同業の金融系ですが、企業の経営を外から見るという点で、コンサルとも業務内容が近いと思います。また、ITでもメーカーでも業種に限らず、当行出身者は活躍できると思います。


寺口:SMBCを卒業した人がさまざまな業界で活躍できるのはなぜなのでしょう。


矢野:2つの理由があると考えています。1つは、SMBCで最初に法人営業を経験していることです。さまざまな業界の経営層と接点を持つことで、経済に対する広い知識、営業力、コミュニケーション能力、プロジェクトを推進する能力などを20~30代から高い水準で身に付けることができます。このようなソフトスキルは業界を問わず、あらゆるシーンで必要とされますよね。


もう1つは、若手が鍛えられる環境が整っていることです。SMBCは若手のうちから鍛える会社なので、4~5年も経験したらもう一人前で、他業界でも即戦力として活躍できる実力は身に付いていると思います。


これは「SMBCあるある」なのですが、外部の方と打合せをするときは、「他社からは複数名の諸先輩方が参加しているのに、SMBCからは若手の担当が一人で参加している」という状況もよくあります。






寺口:確かに、私も銀行在籍時代に、英語が話せない中でグローバルミーティングに参加することがありました。こうした、いうならば「良質な修羅場」を若手のうちから経験することによって、いろんな業界で通用する人材が育つんですね。


矢野:毎日が修羅場です(笑)。私の新人時代には、例えばある案件の進め方について、朝の時点で方針を決めていたのに、夕方には「お客さまにとっての最善策ではないから変更しよう」などというケースがありました。


「朝の時点では進めていいと言ったじゃないですか」という論理はまったく通用しません。そこに気付く想像力が足りない、カスタマーファーストで考えていなかった未熟さゆえなんですよね。悪くいえば朝令暮改ですが、変化の激しい時代に対応するというのはそういうことです。数え切れないほど良質な修羅場を経験させてもらいました。


寺口:ここまでのお話をお聞きしていると、プロジェクトマネジメントスキルも身に付きそうですね。


矢野:そうですね。1つのプロジェクトに集中して管理していくよりも、同時並行で複数のプロジェクトを動かしていくスキルが求められます。


例えば、M&Aの領域では、「買い」を提案すべきプロジェクトと、「売り」の提案をすべきプロジェクトを同時に進行します。また、数百億円、数千億円の大規模な融資案件などもあり、お客さまも含め関わる人の数が増えたり、関わる人の立場も異なったりしますので、うまく連携を取りながらマルチでマネジメントしていくことが求められます。





卒業生の9割が「新卒で入って良かった」と回答





寺口:「SMBCに入社して良かったか?」という質問に対する回答では、77%が「とてもそう思う」と答えてくださいました。「そう思う」も足せば9割を超えます。世の中のニュースのイメージと比べると意外と多い印象です。


矢野:ありがとうございます。ホッとしました(笑)。


寺口:良かった理由を見るとこんな感じです。





スキルだけでなく人に感謝するコメントが多いのも印象的でした。


矢野:率直にうれしいです。確かに若い芽を育てる意志を持ったリーダーが多いのはSMBCの特徴といえます。体育会系といわれる所以かもしれない(実際はそんなことないの)ですが、良くも悪くもお節介で後輩を育てようという意識を持った人が多いです。


私自身の経験でも、直属の上司以外の指導員ではない先輩でも率先して指導してくださる人がたくさんいました。厳しい教育もあれば、優しく指導してくださる方もいて、バランスを取りながら若手を育てていると思います。





寺口:スキルの面で、銀行での経験が役に立ったという回答も多いですね。どのようなスキルなのですか?


矢野:財務に関係する簿記や会計などのいわゆるハードスキルは勉強をすれば取得できます。しかし、それがそのままリアルビジネスで通用するのかとなると、学んだことだけでは足りないでしょう。


例えば、自分で決算書を作ってみると分かるのですが、財務諸表に並んでいる数字には裏側に経営の意図やメッセージがあります。そこにはヒト・モノ・カネの動き、経済情勢、あるいは経営陣の意思などが込められています。その意図やメッセージも含めて読み取るスキルをSMBCで鍛えられた多くの人が、SMBCでも転職先でも日々の業務でそのスキルを発揮してくれていると思います。


寺口:「会社を起こす選択肢はSMBCにいたから生まれた」といった、退職して起業された人の回答もありますね。


矢野:例えば、法人営業では経営者や企業経営が身近に感じられるようになります。案件によっては、業界の上流から下流までさまざまな仕事を把握できます。そのようにして、仕事や経済の流れを見ていると、業界の抱えている課題やウィークポイント、ビジネスチャンスに気が付きます。


自分で解決したい課題が見つかってSMBCを飛び出して起業する選択肢もありますね。今となってはSMBCの中でも起業できる例もあるので、選択肢は広がっています。



一方で、戻りたい社員は25%:それでも人事が喜ぶワケ





寺口:アンケートでは「SMBCに戻りたいと思うか」という質問もしています。これに対して「思う」と答えた人は25%以上でした。「SMBCに入社して良かったか?」と比較すれば少ない結果です。どのように受け止めますか?


矢野:むしろ、25%以上の人が戻りたいと考えてくださっているのは非常に光栄です。以前は、「他社に転職した人を再び採用する」という発想そのものがあまりなかったのですが、近年では、カムバック採用にも積極的に取り組んでいます。


カムバック採用については、世の中全体のイメージもだいぶ変わってきていますよね。昔は会社を辞める人は、実力不足で脱落したようなイメージでしたが、今は転職が当たり前なのでSMBCでも前向きに辞めていく人が多いです。そんなアルムナイ(卒業生)が外で成長して、また戻ってくるのは大歓迎です。



SMBCならではの経験が転職、起業後に役立った





寺口:ここまで、辛辣なコメントにも向き合って実態を話してくださり、ありがとうございました。最後になりますが、卒業した皆さんからSMBCへの感謝のメッセージが沢山寄せられています。







矢野:ありがとうございます。人事冥利(みょうり)、採用冥利に尽きるお言葉の数々です。本音に加えて、SMBCに対する気遣いも感じました。退職者の皆さんからの忌憚(きたん)のないご意見などには今後も積極的に目を向けていきたいと思います。今日のお話を真摯(しんし)に受け止めて、キャリア採用や新卒採用につなげていきます。



あとがき


「退職者の本音を人事に持っていって取材しよう! 無理かなぁ」そんな一言から始まったこの企画。まさか銀行で最初にできることになるとは思いませんでした。実際に話を聞いていると、変わっているところもこれからのところもありました。


転職前提時代、出会いがあればもちろん別れもあります。退職は悪いことじゃないし、退職者は裏切り者じゃない。働き方も変わり、個人と企業の関係が変わっている時代。大切なのは従業員、退職者の声にどう向き合い、どう変えていくのか。矢野さんはじめ、SMBCの人事チームが起こす変化を楽しみにしています。


「退職者の声をもっと聞いて生かしたい」と矢野さんは言ってくれました。もしここまで読んでくださった方の中にSMBC卒業生の方がいたら、声を教えてください。届けます。






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