ここ数年急成長を続け、新卒・中途問わず熱い視線が向けられているコンサルティング業界。ただ、表面的な情報収集ではポジティブな面が語られるだけで、その内実はなかなか見えてこない。
今回は、Big4の一角であるKPMGコンサルティングの採用をリードする金子賢典氏と、事業会社からコンサルタントに転職した南ヒョンヨン氏を招き、普段はなかなか聞けない業界の実態と、「コンサルタントの向き、不向き」について3つの軸で語っていただきました。
金子賢典(かねこけんすけ):KPMGコンサルティング 人材開発室 ディレクター。他の大手コンサルティングファームへ新卒で入社。製造業・テクノロジー企業を中心として、業務改善・システム導入支援に従事。現在、KPMGコンサルティング人材開発室のディレクターとして、新卒・中途の採用領域全般をリード。
南ヒョンヨン(なむひょんよん):KPMGコンサルティング Consultingユニット Digital Transformation Acceleration マネジャー。大学進学のため来日後、日系家電メーカーで調達業務に従事した後、大学院でMBAを取得。2017年KPMGコンサルティングに入社後、DX領域での支援に携わる。
ONE CAREER PLUS キャリアアナリスト 佐賀 駿一郎:2016年ビズリーチ入社。転職サービス営業、新卒採用人事を担当。その後2019年にONE CAREERへ入社。キャリアアドバイザー、イベント企画や司会を経て、現在はONE CAREER PLUS事業開発を担当。
オープニング~コンサルティング業界について
・今さら聞けない「なぜ今からコンサルティング業界へ?」
佐賀:転職でコンサルタントのキャリアを選択する人が増えているのには2つの理由があります。
1.一般化するコンサルタントとしてのキャリア
1つ目は、新卒・中途問わずキャリアにコンサルタントを挟む人たちがどんどん増えていることです。セカンドキャリアとしてコンサルタントを選ぶ方々の前職は、インフラ系、IT系、官公庁などさまざまです。
2.身につくスキル、広がるキャリア
次に、コンサルタントに転職することで上図に示されているようなどの業界でも役立つスキルを手にすることができるのが、人気の理由です。
・コンサルティング業界への転職 最新事情2022
佐賀:近年、コンサルティング業界が採用枠を拡大しているのには、2つの理由があります。
- 業界の成長
以下に示す通り、日本のコンサルティング市場は「日本で唯一の成長産業」とも言われ、2024年には支出額が1兆円に達すると予測されています。コンサルティング需要が増大している理由には2つの側面が関係しています。
- 企業側 : 経済成長の鈍化から既存事業が苦戦している状況下で、生産性の向上やDX促進のプロである外部のコンサルタントを必要としている。
- コンサルティングファーム側 : ビジネスを取り巻く環境の変化によりクライアントのニーズが複雑化し増加する中、多様な人材ニーズ(デジタル人材、マーケター、デザイナーなど)が増大。
2. デジタル化による垣根の消失
かつてコンサルティングファームは「戦略系」「総合系」「IT系」とカテゴライズされていました。
しかし今では、戦略提案の中でも最終的にITソリューションの提案が求められるなど、デジタルやテクノロジーとコンサルティングサービスは切り離せないものになってきています。
未経験からコンサルタントを目指すには、一般的にコンサルティングファームの部署は「ソリューション軸」と「インダストリー軸」に分かれ、この2つの軸の組み合わせでクライアントの課題解決をしていきます。入社後は1つの部署に所属し、その専門領域で知見を深め、経験を積んでいきます。
では、未経験からコンサルタントを目指す場合、どのように一人前を目指すのでしょうか?
まずは、ポータブルスキルを習得し、アサインされたプロジェクトでキャッチアップすることは必須です。一方で、未経験のためコンサルタントとしてすぐに活躍するのは難しいと考えるかもしれませんが、前職の事業会社での経験を活かし、「勘所」を活かして貢献することは可能です。
例えば、クライアントとして関わる事業会社には経営層、決裁者、現場担当者などさまざまなレイヤーのステークホルダーが存在します。部署間で連携する際には、事前にどこのどのレイヤーから承認を得る必要があるといった、部署間の調整や現場での推進方法など事業会社にいて体感的に理解していることは強みと言えるでしょう。
このように、未経験でも前職の経験を活かせる要素があることを踏まえ、「コンサルタントの向き・不向き」に関して、KPMGコンサルティングのお二人と討論していきたいと思います。
KPMGコンサルティング企業説明
KPMGは、監査、税務、アドバイザリーサービスを提供する、独立したプロフェッショナルファームによるグローバルな組織体です。
KPMGは143の国と地域でサービスを提供しており、世界中のメンバーファームに265,000人以上の人員を擁しています。
KPMGコンサルティングは、KPMGインターナショナルのメンバーファームとして、ビジネストランスフォーメーション(事業変革)、テクノロジートランスフォーメーション、リスク&コンプライアンスの3分野から企業を支援するコンサルティングファームです。各分野の専門知識と豊富な経験を持つコンサルタントが在籍し、あらゆる業界のクライアントに対し、幅広いコンサルティングサービスを提供しています。
詳しくは、KPMGコンサルティング社の採用ページをご覧ください。
パネルトークパート:コンサルタントの向き/不向き
①スキル
佐賀:ここからは、コンサルタントの向き/不向きを「スキル」「マインドセット」「キャリア」の3つの軸から深掘りしていきます。まず、スキル軸の観点で、コンサルタントに必要/求める要素とは何でしょうか?
南:インプット、プロセス、アウトプットに分けて説明します。
● インプット
○ 情報収集力、リサーチ力
■ 自ら積極的に情報を取りに行く力
○ 仮説構築力
■ 収集すべき情報とそれらを活用するストーリーを描く力
■ 収集した情報を基に仮説をさらに磨く力
● プロセス
○ 構造化する能力
■ 仮説に沿って情報を構造化し、整理する力
○ 考え抜く力
■ 最後の最後まで考えることをやめない力
■ なぜ?本当に?と現状に満足せず、疑問を持ち、追求し続ける力
● アウトプット
○ コミュニケーション能力
■ 考えていることを言語化し、他者に伝える力
■ 「言語コミュニケーション能力」と「非言語コミュニケーション能力」に分けられる
● 言語コミュニケーション能力
○ 頭の中にあるものを言葉にして示せる能力
■ パワーポイントやエクセルなどを使って見える形にする力
● 非言語コミュニケーション能力
現在は対面よりもオンラインでのやりとりが増え、テキストベースで説明する「言語コミュニケーション能力」が以前にも増して求められてきていると感じます。
佐賀:これらのスキル、入社前から必要なのでしょうか?
金子:情報や技術・スキルはいくらでも学べます。それ以上に、選考プロセスでは、価値観を重視して見ていますね。人間の頭を、知っている・知らないの「情報」のレイヤー、できる・できないの「技術・スキル」のレイヤー、好き・嫌いの「価値観」のレイヤーといった三段構造で分けたときに、コンサルティングファームには、情報、技術・スキルを教える仕組みはあります。ただ、好き・嫌いという個人の価値観は不変的なので、考え続けることが好きかどうかが重要だと思っています。
佐賀:ケース面接では、思考力や問題解決能力が見られていると思っていたのですが、面接官としては「問題解決をすることが好きか?」「課題に対して楽しんで向き合えるか?」という視点でも見ているのでしょうか?
金子:もちろん、ケース面接で技術をまったく見ないというわけではありません。それだけではなくて、答えのない問いを投げかけられたときに、どこまで頑張って考えられるか、ワクワクできるか、打ち返えそうと思えるかが大事です。それが思考という知的活動が好きか嫌いかということだと思います。
南:私も面接官の立場でケース面接をすることがあるのですが、見ているところは「与えられた問いの趣旨、何を求められているかゴールを確認しようとするか」という点です。考えることが好きでないとそういった行動をしないですし、確認する方は問題を解決することで何かしらの貢献をしたいという欲求を持っているのだろうと思っています。
②マインドセット
佐賀:面接の中で、思考することが好きか嫌いかを見ているとのことでしたが、知的好奇心の有無はかなり重要なのでしょうか?
金子:コンサルタントとして日々求められることは、答えのない問いに挑むことです。ケース面接でもフェルミ推定でも、答えがないのはビジネスと一緒です。100点を目指して挑み、到達できないからといって、思考が停止してしまうような人はコンサルタントには向いていないと思います。100点じゃない、もしかしたら20点かもしれないけれど、その20点を積み上げて100点に近づけられるよう考え続けられるかどうかが重要です。この点はすべての面接官が見ているポイントではないでしょうか。
また、コンサルタントの仕事を一言で言うと、知的活動でクライアントを喜ばせるサービス業です。先ほど南さんは、コンサルタントに必要な要素である知的活動のスキルについて言及してくれましたが、その前提となるのは知的活動が好きであることです。好きでなかったら、スキルも身につきません。
加えて、知的活動であると同時に、コンサルティングはどこまでいってもサービス業なので、自分が頑張って、クライアントが喜んでくれたら自分も嬉しくなる共感力を持っている人はコンサルタントに向いていると思いますね。
佐賀:なるほど。ちなみに、南さんは思考することの楽しさのようなものは前職の事業会社に在籍していた時からすでに感じていたのでしょうか?
南:前職の調達業務で求められていたことは、購入している部品の価格、数量などの適正化で、それに向けていろいろな打ち手を考えるのは好きではありました。が、苦手でした。(笑)得意苦手は経験で培える部分ですが、好き嫌いは素質の部分なのかなと思っています。
金子 :知的好奇心はコンサルタントにとって一番大事なマインドセットだと思います。コンサルティングとは、クライアントがまだ気が付いていない課題を見つけて解決する仕事です。氷山に例えると、海面の下に隠れている、見えない部分に気づけるか。そういう顕在化されていない複雑な部分に対して知的好奇心を持ち続けられる人でないと、コンサルタントとしてやっていくのは難しいと思います。
佐賀:マインドセットの点でいうと、よく成長意欲というワードもあがりますが、コンサルタントにとって「成長意欲」とは何でしょうか。
金子:コンサルタントとして大きく成長する機会は、「丸投げされる領域が増えること」だと思います。つまり、成長意欲とは、「事細かに指示されずに、自ら考え意思決定できる領域を増やしたい」ということと言い換えられるでしょう。
コンサルティングファームでは、上司から言われたことだけやっていたら怒られるんですよね。一般的なピラミッド型の組織では、上司から言われていないことをすると怒られると思いますが、その逆です。コンサルタントを目指す人には、事細かに指示してもらえない世界で生き抜いてやるという成長意欲を持ってほしいです。指示されていないことに、「そんなこと聞いていません」って言った自分に幻滅して、反省できる人を「成長意欲がある人」と定義できるかもしれません。
南:マインドセットの観点では、「柔軟性」も必要だと思います。コンサルタントとしてこだわりを持つことは大事ですが、自分はこれだけ、とカチカチに固めてしまうより、しなやかに動ける人は間違いなく成長できますね。上司からの指示や依頼に対して、自分なりに考えて解釈した上で、プラスアルファで提案したり相談できるかどうかも大事だと思います。
佐賀:自ら考え続け、柔軟に動くことでコンサルタントならではの思考力も身に付くということなんですね。
③キャリア
佐賀:南さんはコンサルタントへの転職時に、今後のキャリアについてどのように考えられたのでしょうか?また、KPMGコンサルティングに入社後、キャリア観に変化はありましたか?
南:実は、転職当初はずっとコンサルティング業界にいるつもりはありませんでした。
転職活動をしていた時、自分がやりたいことはマーケティングの仕事で、やれることは調達の仕事、と思っていました。でも、やるべきことは分からなかったんです。
ここで言う「やるべきこと」とは、「自分の将来のため、社会・経済への貢献」というように考えています。
やるべきことが分からない中で、それを見つけるためには、もっと力をつけないといけない。さまざまな業界のビジネスを横断的に見渡して、その中で自分がやるべきことは何かを見つける。それが可能な職業がコンサルタントであると考え選んだというのが正直なところです。KPMGコンサルティングに入社してからは、より自分の将来のことを考え、少なくともデジタルの要素がないとキャリアが行き詰るのではないかと考え、現在所属している部門を選びました。
コンサルタントという職種ではなく、仕事を通じて何を実現していきたいのか?を考えることがキャリアの観点では重要だと思います。
視聴者からの質問 :
視聴者からの質問です。
「コンサルティング業界は現在好調ですが、今後はどのような発展を想像されていますか?」
金子:コンサルティング業界に限らず、今と同じことをしていて、10年後も発展し続けられる業界はないと思います。特に、コンサルティング業界は規制などで守られていない、参入障壁ゼロの産業です。付加価値を上げていくことで変わっていかなければなりませんし、立ち止まっていてはいけない業界です。なので、業界の好不況に惑わされず変化し続けることが求められると思っています。
佐賀:ちなみに、他のコンサルティングファームと比較したときにKPMGコンサルティングの強みはなんですかという質問もきているのですが、その点はいかがでしょうか。
金子:提供サービスの内容で見ると、他社と差をつけることは難しいと思いますが、他社との「違い」としては、新卒と中途採用の比率が挙げられます。当社は中途入社者の比率が比較的高いことが一つの特長です。
まだ年数の浅いKPMGコンサルティングが、他社と戦っていくには、付加価値を上げていくことでイノベーションを興すことが必要です。異なるアイディアや価値観を持つ人たちの間のコミュニケーションを通じて発生する違和感が、イノベーションの種となっていく。そうなると、人材のダイバーシティは非常に重要で、イノベーションの実現に不可欠とも言えるでしょう。
新卒採用数が他のコンサルティングファームに比べて少なくなっているのも、やみくもに新卒入社者の比率を上げるのではなく、ダイバーシティを維持するために未経験者を含む中途入社者とのバランスを重視しているからこそです。
佐賀:「未経験でも入社は可能なのか」という質問もきていますが、いかがでしょうか?
金子:もちろん可能です。コンサルタント未経験で入社する社員はとても多いですね。確かに、コンサルタント経験者であれば即戦力になりますが、「コンサルタントとはこうあるべきだ」という思考パターンになりがちという側面もあります。そうなると、前述したイノベーションを興すゲームでは勝ち抜けない。だから、未経験の方には新しい視座・視点を積極的に提案していくことを求めています。未経験からの転職は不安も大きいかと思いますが、私たちは人材育成に力を入れ、研修をはじめとして成長できる制度や環境を整えていますので、安心していただきたいですね。
佐賀:事業会社からコンサルタントへ転職する際に、事業会社で培ってきた強みも活かすことができると冒頭で説明いたしました。南さんはこの点、どうお考えでしょうか?
南:バランスが必要だと思います。事業会社で培った強みは1つの「武器」でもある一方、コンサルタントとして新しく身に付けるべきスキルこそが「武器」となる場面もあります。状況に合わせて必要な武器を切り替えていく、また、武器の選択肢は多いほうが戦い方も変えられますから、新しい強みを身につけていくことも大事です。
佐賀:なるほど。ちなみに南さんは、実際に事業会社からコンサルタントに転職されて感銘を受けた出来事(感想・体験)はありますか?と追加の質問がきていますがいかがでしょうか。
南:前職では、あるべき姿を語ったときに、「とはいえ現場はそうじゃないから」と一言で片付けられることが多かったんです。でも、コンサルタントに転職後は「本来はこうあるべきじゃないですか?」という提案をしたときに「確かにその通り」と上司が受け入れてくれたり、それを起点に一緒に議論してくれたことにとても驚きました。
具体的には、上司からの指摘に対し、ある種反発して自分の考えや意図を伝えた際のエピソードです。「なるほど、そういう考えなんだね。じゃあ…」と、上司がすぐに応えて、より前向きな議論に進んだことを、今でも鮮明に覚えています。
クロージング:登壇者からのメッセージ
佐賀:最後にお二人から参加されている方々にメッセージをお願いします。
金子:プロジェクトはクライアントあっての仕事であり、締め切りがあるので忙しい時期もあるのは確かです。プロフェッショナルですから、ある程度は覚悟も必要です。
しかし、コンサルタントのいいところは「波がある」ところ。毎日慣れ親しんだ仕事や決まった時間に働くというスタイルの仕事を望む方も多いかもしれませんが、一方で「波がある方がエキサイティングで面白い」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。そういう方にはぜひ、コンサルタントに挑戦してほしいですね。コンサルタントに限らず、自分が一番エネルギーを傾けられる仕事に就くことが幸せにつながると思っています。
それを見極めるためにも、KPMGコンサルティングやコンサルタントについてもっと理解を深めていただけたら嬉しいです。また、私たちの採用ホームページからキャリア登録をしてくださることで、気軽にカジュアル面談をセッティングすることもできます。少しでもご興味を持たれた方は、キャリア登録ページから自由にご要望をお寄せください。
南:私はKPMGコンサルティングがすごく好きで、これからも働き続けたいと思っています。KPMGコンサルティングは若い会社ですが、社員を論理性や専門知識といったIQ面だけではなく、リーダシップ、共感力などEQ面でもしっかりと育成しています。
今日は少し先輩という立場で語らせてもらいましたが、私自身もまだ未熟ですし、これからも変化し続けたいと思っています。一緒に成長し、変化できる仲間を募集していますので、皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。
コンサルティングファームへの転職スケジュール
コンサルティングファームへの転職では、3ヶ月から半年程度の時間をかけ、入念な対策を行うことが必要です。具体的には、応募先選定に1ヶ月、選考対策に1~3ヶ月、選考から内定まで1~2ヶ月、内定後に条件交渉などをするのに0~1ヶ月です。つまり、夏〜秋頃に転職を考えているなら、今から準備をしなければならないということです。
コンサルティングファームでの選考ポイントは以下の通りです。大きく分けると「思考力」と、意外に思うかもしれませんが「人間的魅力」が注目されます。
具体的な選考対策には、ワンキャリアプラスを是非ご活用いただければと思います。