トヨタ自動車(以下、トヨタ)、本田技研工業(以下、ホンダ)、日産自動車(以下、日産)。日本の自動車産業を代表する3社は、いずれもグローバルメーカーとして同じ土俵で戦っているように見えますが、2026年3月期の決算を並べると、その実像はまったく異なります。
トヨタは米国関税で約1兆4,000億円の営業利益を吹き飛ばされながらも、3.8兆円の黒字を確保。日本企業として初めて売上50兆円を突破しました。ホンダは「2021年に描いたEV戦略」の前提が崩れ、合計1兆5,778億円のEV関連損失を計上した結果、営業損益は4,143億円の赤字に転落(一方で二輪事業は過去最高益)。日産は構造改革プラン「Re:Nissan」を進める中、営業黒字を維持したものの、最終損益は5,331億円の赤字に沈みました。
転職市場でもよく比較される3社ですが、実際のところ、どの会社が自分にフィットするのでしょうか。本記事では、3社の最新通期決算(2026年3月期実績)と2027年3月期見通し、直近の2027年3月期第1四半期(1Q)実績、そしてワンキャリア転職に寄せられたクチコミから、数字とカルチャーを徹底比較。「どの会社が自分に合っているのか」を見極めるための判断材料を提供します。
\【クチコミ速報】本田技研工業の社員による最新の声(2026年7月21日更新)/
入社後に気づいた良いギャップ:
想像以上に現場との距離が近く、人事も机上で制度を考えるだけでなく、現場へ足を運び社員の声を聞きながら施策を進める文化がありました。また、役職や年次に関係なく建設的な意見交換ができる場面も多く、「ワイガヤ」と呼ばれる対話を重視する姿勢が実際の業務にも根付いていると感じました。若手にも裁量が与えられ、自ら手を挙げて挑戦できる機会が多い点は、入社前のイメージ以上に魅力的でした。
(2026年7月/在籍中/人材開発・人材育成・研修)
- 1: 【決算比較】数字で見るトヨタ・ホンダ・日産の「現在地」
- 1-1:営業利益比較:トヨタはホンダの約3.6倍、日産の65倍
- 1-2:「らしさ」が出た2026年3月期:関税のトヨタ/構造改革のホンダ/生き残りの日産
- 1-3:グローバル販売:地域分散のトヨタ、北米・アジア依存のホンダ、新興国シフトの日産
- 1-4:成長戦略:「モビリティカンパニー」か「電動化の深化」か
- 2:【年収・社風比較】クチコミで見る「働く環境」のリアル
- 2-1:カルチャー:「カイゼンのトヨタ」vs「夢のホンダ」
- 2-2:平均年収:トヨタがリードも、ホンダも高水準
- 2-3:働き方:福利厚生のトヨタ、柔軟性のホンダ
- 2-4:転職理由:グローバル志向か、裁量重視か
- 3:まとめーあなたに合うのはどこ?
- ワンキャリア転職のご紹介
1: 【決算比較】数字で見るトヨタ・ホンダ・日産の「現在地」
まず、両社の経営状況を客観的な数字から比較します。事業の成長性や収益構造、未来への投資姿勢から、それぞれの「今」の姿を明らかにします。
1-1:営業利益比較:トヨタはホンダの約3.6倍、日産の65倍
(出典)トヨタ「2026年3月期 決算要旨」/ホンダ「2026年3月期 決算短信」/日産「2026年3月期 決算短信」
※トヨタ・ホンダはIFRS、日産は日本基準。比較の便宜上、各社が開示する「営業利益」を同一指標として扱っています。ホンダの「調整後営業利益」は会社開示の独自指標で、四輪電動化戦略見直しに伴うEV関連損失(営業利益分1兆4,536億円)を控除したもの。
2026年3月期は、3社の置かれている状況の違いが鮮明に表れた1年となりました。
トヨタは売上収益50兆円超、営業利益3.8兆円という圧倒的なスケールを維持。ホンダは二輪事業の好調などにより「実力ベース(調整後)」では営業利益1兆393億円・営業利益率4.8%を確保したものの、EV関連損失1兆5,778億円(うち営業利益分1兆4,536億円、持分法損益1,241億円)の計上により、報告ベースの営業損益は△4,143億円の赤字に転落しました。日産は売上12兆円・営業利益580億円と、規模に対する利益率の低さが際立ち、本業の構造改革の途上にあることがうかがえます。
トヨタとホンダの調整後営業利益(1兆393億円)を比べると、その差は約3.6倍。トヨタと日産の営業利益では約65倍と、規模・収益力の格差はなお大きく開いています。利益率で見ても、トヨタ7.4%、ホンダ調整後4.8%、日産0.5%と、トヨタが他社を引き離す構図です。
1-2:「らしさ」が出た2026年3月期:関税のトヨタ/構造改革のホンダ/生き残りの日産
3社の決算を読み解くと、それぞれが直面している論点と打ち手の違いが浮かび上がります。
トヨタ:米国関税1.4兆円を「販売増・価格改定・VC収益」で打ち返す総力戦
トヨタの営業利益は前期比1兆293億円の減益となりましたが、その最大要因は米国の関税政策による影響額1兆3,800億円です。これを、HEVを中心とした販売台数増(連結販売台数959万5千台、前期比+2.5%)、価格改定、バリューチェーン(VC)収益の拡大、原価改善などで一部吸収する形となりました。
所在地別営業利益では、日本2兆3,307億円、欧州3,308億円、アジア8,723億円、その他地域3,078億円といずれも黒字を確保。一方、北米は△2,986億円と関税の直撃で赤字転落しました。金融セグメントの営業利益は8,517億円と前期比+24.6%の増益で、地域・事業の両面で広い収益源を持つ強みが改めて示されました。
なお、2027年3月期第1四半期(1Q)実績においても、営業収益は13兆5,254億円(前年同期比+10.4%)、営業利益は1兆634億円(同△8.8%)を確保。資材高騰などの影響を受けつつも、親会社所有者に帰属する四半期純利益は1兆4,770億円(前年同期比+75.6%)に達し、依然として四半期ベースで圧倒的な収益力を維持しています。
ホンダ:EV関連損失1.5兆円で営業赤字に転落、ただし二輪は過去最高益で「実力ベース」は黒字維持
ホンダの2026年3月期は、四輪電動化戦略の見直しに伴うEV関連損失が業績を直撃しました。第3四半期累計までに発生したEV関連損失2,671億円に加え、2026年3月12日に発表した北米EVモデルの上市・開発中止(Honda 0 SUV/Honda 0 Saloon/Acura RSX)等に伴う追加損失1兆3,106億円を第4四半期に計上。EV関連損失の合計は1兆5,778億円(うち営業利益分1兆4,536億円、持分法投資損益1,241億円)にのぼり、営業損益は△4,143億円、当期損益は△4,239億円と、いずれも赤字転落となりました。
一方、二輪事業はインド・ブラジルを中心に販売台数2,210万1千台(前期比+7.4%)と過去最高を更新し、営業利益7,319億円(同+10.3%)も過去最高を達成。四輪事業の調整後営業利益(EV関連損失除く)も425億円の黒字を維持しており、EV関連損失を除く「実力ベース」では営業利益1兆393億円・営業利益率4.8%を確保しています。R&D調整後営業キャッシュ・フローは2兆6,579億円、事業会社ネットキャッシュ3兆3,245億円、自己資本比率55%と、財務基盤は引き続き健全です。これからは、中型・大型HEVへの投資を集中させ、SDV領域への投資は継続、EVは長期視点で仕込みを続ける、というのが新たな方針となります。
続く2027年3月期第1四半期(1Q)では、売上収益6兆615億円(前年同期比+13.5%)、営業利益5,307億円(前年同期比+117.4%)、親会社所有者に帰属する四半期純利益4,509億円(前年同期比+129.3%)と、前年のEV関連損失の一巡や収益性の改善により、V字回復を果たしています。
日産:「Re:Nissan」初年度、関税2,860億円を吸収して営業黒字を確保
日産は2025年5月に発表した経営再建計画「Re:Nissan」の初年度として、固定費削減(5,000億円目標)・生産拠点の再編(17拠点→10拠点/生産能力500万→400万台)・開発期間の短縮(37か月へ)に取り組みました。
2026年3月期は売上12兆79億円・営業利益580億円とコスト削減で米国関税の影響2,860億円や為替変動の多くを相殺したものの、生産体制の統廃合や減損処理に伴う特別損失5,768億円が重く、親会社株主に帰属する当期純損失は5,331億円となりました。所在地別では日本54億円・北米687億円・アジア313億円が黒字、欧州△541億円・その他△52億円が赤字と、地域ごとのばらつきが残ります。
一方で、自動車事業のフリーキャッシュフローは下期に1,120億円のプラスに転換、期末ネットキャッシュは1兆1,704億円と健全性は維持しています。
2027年3月期第1四半期(1Q)においては、売上高2兆9,642億円(前年同期比+9.5%)、営業利益778億円(前年同期は791億円の赤字)、親会社株主に帰属する四半期純利益37億円(前年同期は1,157億円の赤字)を計上し、営業損益・最終損益ともに前年同期の赤字から黒字へ浮上。「Re:Nissan」の成果が足元の業績にも表れ始めています。
1-3:グローバル販売:地域分散のトヨタ、北米・アジア依存のホンダ、新興国シフトの日産
連結販売台数の構成から、3社の海外戦略の違いがうかがえます。
トヨタ
連結販売台数959.5万台。北米175万台(19%)、日本163万台(17%)、アジア293万台(31%)、欧州118万台(12%)、その他108万台(11%)と、特定地域に偏らないバランス型。電動車(HEV/PHEV/BEV/FCEV)は前期比+6.5%の504万台で、過去最高を記録。HEVが462万台と圧倒的な主力です。
ホンダ
二輪は2,210万台と過去最高で、うちアジアが1,873万台(85%)を占める圧倒的構造。四輪は338万台(前期比△8.9%)で、北米160万台(47%)、アジア92万台(27%)、日本60万台(18%)の順。中国を含むアジアでEV競争激化により台数を落とした影響が大きいです。事業利益でも、二輪事業7,319億円・金融サービス事業2,755億円の利益が、EV関連損失で赤字となった四輪事業(営業損失1兆4,111億円・調整後営業利益425億円)を支える構図がより鮮明になっています。
日産(2026年3月期 グローバル小売販売315万台、前期比△5.8%):北米129万台(41%)、アジア77万台(25%)、欧州31万台(10%)、日本39万台(13%)、その他36万台(12%)。北米依存度の高さは変わらないものの、中国販売は前年比△6.3%と苦戦が続く一方、メキシコは堅調、インド向けには新型SUV「テクトン」を投入するなど、新興国シフトが進みつつあります。
トヨタは販売地域の分散で為替・地域要因のリスクを吸収しやすく、ホンダは依然として北米・アジアの動向に業績が大きく左右されやすい構造、日産は北米と中国の二大市場の回復が来期の鍵になる、というのが各社の現状です。
1-4:成長戦略:「モビリティカンパニー」か「電動化の深化」か
(出典)トヨタ「決算報告プレゼンテーション資料」/ホンダ「決算説明会資料」/日産「プレゼンテーション資料」
トヨタは、中東情勢の影響(資材価格高騰)4,000億円を含む△6,700億円の市場環境悪化を見込み、3期連続の減益見通し。一方で、「もっといいクルマづくり(5ブランド戦略・稼ぐ力の強化)」と「モビリティカンパニーへの変革(VC収益拡大・新モビリティ・SDV/ロボティクス)」を二本柱に、長期ではROE 20%を目指す方針です。
ホンダは、2027年3月期もEV関連損失5,000億円を引き続き計上する想定としつつ、営業利益5,000億円・当期利益2,600億円の黒字回帰を見込みます。EV関連損失を除いた調整後営業利益は、前期と同等の1兆円。二輪事業では過去最高となる2,280万台の販売を計画し、四輪事業は北米を中心としたICE/HEVの販売強化、アジアではモデルチェンジで台数を下支えする方針です。米国LGエナジーソリューションとのバッテリー合弁会社の工場建屋取得などにより、設備投資は前期7,513億円→1兆2,500億円へ大幅に増額。配当は年間70円を維持し、調整後親会社所有者帰属持分配当率(DOE)3.0%を目安に「安定的・継続的な配当」を継続します。
日産は、コスト削減3,400億円とモノづくり改革で営業利益を前期580億円から2,000億円へ大きく引き上げる計画。販売台数も330万台(前期比+4.7%)と回復を見込みます。Re:Nissan最終年度として、2026年度内に7生産拠点のうち6拠点の統廃合、新型「キックス」「エルグランド」「インフィニティQX65」「ローグe-POWER」など複数モデル投入を予定。一方で、業績の見通しと手元資金の状況を勘案し、配当は無配を継続します。
3社に共通するのは、米国関税・中東情勢・EV需要の鈍化といった大きな外部環境変化を前に、いずれも「短期での挽回」を諦め、「中長期の事業構造変革」に経営資源を振り向けている点です。働く人にとっては、トヨタでは「もっといいクルマ」と「モビリティカンパニー」の両輪、ホンダでは「HEV・SDVに軸足を移した再起」、日産では「Re:Nissanの完遂と次の成長」という、それぞれ違う成長機会が広がっています。
2:【年収・社風比較】クチコミで見る「働く環境」のリアル
決算データから見えてきた事業戦略の違いは、働く環境やカルチャーにどう反映されているのでしょうか。ここからは、ワンキャリア転職に寄せられたクチコミから、「実際どうなのか」「自分に合っているのはどちらか」を探っていきます。
さらに・・・





