こんにちは、トイアンナです。
「親が倒れた翌週に、自分の家計が詰みかねないことに気づきました」
この言葉を放ったのは、なんと世帯年収1,800万円の男性でした。
「タワマンに住んでる人が介護で困るとか、知らんがな」
「稼いでるんだから貯金しておけよ」
と、突き放したくもなります。しかし、ハイクラスには「ハイクラスだからこそ」の悩みがあるのです。というのも、ハイクラス世帯の家計は、減らせない固定費で組み上がっているからです。
親の資産を「詳しく把握している」人は6.8%しかいない
まず、数字を置きます。
Sasuke Financial Labが2026年7月に30〜50代400名へ実施した調査によれば、親の資産を「詳しく把握している」と答えた人はわずか6.8%。逆に、「ほとんど・全く把握していない」人は55.0%にのぼりました。
50代になっても、9割近くが実家の財布の中身を知りません。
一方で、総務省の就業構造基本調査では、働きながら介護をしている人は365万人。介護・看護を理由に離職した人は、直近1年で10万6,000人に上ります。親の介護の直撃を受けている人口は365万人。しかし、多くの人が親の経済状況を知らない……。
この差が、そのまま「詰み」につながります。
残額1万円で回っている、完璧なライフプラン
都内のタワーマンションに住むSさん(仮名)は、大手金融機関の管理職。妻も総合職で、世帯年収は1,800万円です。お子さんは2人とも私立小学校に通っています。
ヒアリングをもとに再現した家計が、こちらです。
手取り月収(夫婦合算・賞与を除く):約95万円
賞与で年間の帳尻を合わせる設計です。破綻はしていません。むしろ、投資も教育もできている優秀な家計です。
ただし、この表には「親」という費目がありません。
介護費用は、金額ではなくタイミングで足元をすくう
では、「親の介護」にはいくらかかるのでしょうか。
生命保険文化センターの生命保険に関する全国実態調査によれば、介護に要した費用は、住宅改造や介護ベッドなどの一時的な費用が平均47.2万円。月々の費用が平均9.0万円。介護期間は平均55.0カ月、4年7カ月です。
単純計算で、総額およそ542万円。
在宅なら月5.3万円、施設なら月13.8万円と幅があります。
さて、この数字を見て「1,800万円も稼いでいれば払える」と思われたなら、その感覚は半分正しく、半分間違っています。
年収1,800万円の世帯にとって、542万円は払えない金額ではありません。問題は、Sさんの残額が月1万円だったことです。
住宅ローンは減らせません。私立小の学費も、途中で公立に転校させる決断は、そう簡単に下せるものではない。固定費とは、収入が減っても支出が減らない契約のことです。
そこに月9万円が乗る。それだけで、家計は毎月8万円の赤字に転じます。
そして、月9万円で済まないのが遠距離介護です。地方の実家へ月2回帰省すれば、新幹線代と宿泊で月5〜8万円。有給は帰省で消え、有給が尽きれば欠勤になり、欠勤が続けば評価に響きます。
介護は、貯金からではなくキャッシュフローから削り取っていくのです。
最大の地雷は、親の口座が動かせなくなること
さらに、多くの方が「親の介護費用は、親の資産で払う」と考えています。実際、それが最も健全な設計です。
しかし、その前提には条件がつきます。親本人に、判断能力があることです。
三井住友信託銀行の推計によれば、2030年には認知症の人が保有する資産が533兆円に達する見通しとされています。
認知症と診断され、意思確認ができないと金融機関が判断した場合、預金の引き出しや不動産の売却に制限がかかることがあります。
対応は金融機関や状況によって異なりますが、「親の通帳から親の介護費用を出す」という当たり前が、当たり前でなくなる可能性は現実にあります。
その場合の選択肢が成年後見制度ですが、こちらも万能ではありません。前掲の報道によれば、後見人に親族が選ばれるのは全体の約19%。残りの8割前後は、司法書士や弁護士など第三者の専門家が選任されています。専門家が就けば、当然ながら報酬が発生し、それは親が亡くなるまで続きます。
つまり、実家の資産は「あるかどうか」だけでなく「動かせるかどうか」が問題なのです。
なお、私は弁護士でもFPでもありません。家族信託や任意後見といった制度には向き不向きがあり、費用も家庭ごとに変わります。ここでお伝えしたいのは制度の是非ではなく、親の判断能力があるうちにしか選べない選択肢が存在するという事実です。
なぜ、優秀な人ほど実家の話を先送りするのか
なぜこうなるのか。これは、Sさんが親不孝だからではありません。3つの構造があります。
さらに・・・



