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カカクコムTOB争奪戦|EQT5,900億円買収提案にLINEヤフー+ベインが対抗 「食べログ」をめぐる経済圏争い

価格比較サイト「価格.com」、グルメサービス「食べログ」などを運営するカカクコム(東証プライム上場)を巡るM&Aが、わずか2日で争奪戦の様相を呈してきた。


スウェーデンの投資ファンドEQTが特定目的会社「Kamgras 1」を通じて2026年5月12日に総額約5,900億円規模の株式公開買付け(TOB)を発表し、カカクコムは賛同・応募推奨を表明。同社は非上場化に向け動き出した。ところが2日後の5月14日には、LINEヤフーが米ベインキャピタルと共同でEQT提案より約8%高い買収案をカカクコムへ再提示。法的拘束力はないものの、争奪戦に発展する可能性が一気に高まった。


本稿では、カカクコムTOBの全体像、関係者の思惑、ビジネス影響、そしてカカクコム・デジタルガレージ・LINEヤフー3社の社員クチコミから見える「現場の温度感」までを整理する。






1.EQTによるTOBの全体像――1株3,000円・総額5,900億円規模


5月12日に発表されたスキームの要点は以下の通り。

項目

内容

公開買付者

Kamgras 1(EQT傘下の特定目的会社)

買付対象

カカクコム普通株式(新株予約権を含む全株式)

買付価格

1株3,000円(普通株式)

買付下限

34,941,000株(発行済株式の17.91%相当)

買付上限

設定なし

TOB期間

2026年5月13日~7月2日

買収総額

約5,900億円規模

カカクコム対応

賛同・応募推奨


特徴的なのは、これがMBO(経営陣による買収)には該当しないものの、MBOに準ずる手続きで進められる点だ。カカクコムの筆頭株主であるデジタルガレージ(発行済株式の20.5%保有)はKamgras 1の親会社「Kamgras 2」に20%出資し、間接的にカカクコムへ再出資する形をとる。2位株主のKDDI(17.55%保有)も既にKamgras 1とTOBに「応じない」契約を締結済みで、TOB成立を前提に9月下旬のスクイーズアウト手続き(株式併合)を経て、10月下旬にカカクコムによる自社株買い(自己株式取得)に応じて売却される見通しだ。


非公開化の狙いについて、カカクコムは「意思決定の迅速化と、サービスへのAI(人工知能)導入の強化」を挙げる。AI開発競争が加速するなか、四半期ごとに業績を開示し続ける上場会社のままでは、長期的かつ大型のAI投資判断が難しくなっているとの判断と言えそうだ。


(参考)Kamgras 1株式会社による当社株券等に対する 公開買付けに関する賛同の意見表明及び応募推奨のお知らせ|株式会社カカクコム、同(訂正報

Kamgras 1株式会社による株式会社カカクコムに対する公開買付けの開始に関するお知らせ|株式会社カカクコム





2.LINEヤフー+ベインによる対抗提案――食べログ「1億人経済圏」が焦点


事態が動いたのは、TOB発表の2日後だった。5月14日、LINEヤフーがカカクコムに買収案を再提示したことを発表した。LINEヤフーは米ベインキャピタルと共同で、TOB想定価格をEQT提案より約8%高い1株3,232円で提示。5月上旬に行った最初の提案と同様、現時点では法的拘束力はないが、争奪戦に発展する公算が大きくなった。


LINEヤフーが狙うのは、ヤフーやLINE、PayPay、ZOZOなどを束ねたグループの利用者基盤と、カカクコムの「食べログ」「価格.com」のユーザーを掛け合わせた「1億人経済圏」だ。レストラン検索・予約から決済、ポイント、広告まで一気通貫で取り込めるカカクコムの存在は、Yahoo! JAPAN/LINEヤフー側にとって戦略的に大きな意味を持つ。グループ内のYahoo!ロコ・PayPayグルメと食べログの統合や、Yahoo!ショッピング・PayPayモール・ZOZOと価格.comの横串連携によって、検索・購買・支払・予約という一連の消費者行動を自社経済圏内で完結させる絵姿が描けるためだ。


カカクコムの取締役会は5月12日時点でEQT案に賛同しているが、上場企業の取締役にはフィデュシャリー・デューティー(株主に対する忠実義務)があり、より高い対価を提示する対抗提案を真剣に検討する義務がある。今後カカクコムが、LINEヤフー案を「公正性ある対抗提案」として正式評価するかどうかが当面の焦点となる。


(参考)カカクコム株式会社の資本政策に関する提案書の提出についてのお知らせ|LINEヤフー株式会社

LINE ヤフー株式会社より公表された「カカクコム株式会社の資本政策に関する提案 書の提出についてのお知らせ」について|株式会社カカクコム





3.M&Aの背景――カカクコムの業価値とAI戦略


カカクコムは2026年3月期に売上収益941億円、営業利益272億円超の高収益IT企業として知られる。サブスクリプション型SaaSと並ぶ高い収益性が魅力だ。


一方で、近年は食べログを取り巻く飲食店向け広告市場の競争激化や、価格.comの比較検索領域でのAI生成検索(AI Overview)の台頭など、コアサービスの戦略再構築を迫られている。EQT、LINEヤフー+ベインの双方ともAI実装と新規投資を非公開化で加速したい考えで、5,900億円超という買収価額にもこの「AI転換コスト」が織り込まれているとみられる。


なお、デジタルガレージはカカクコムの株式売却で多額の売却益を計上できる見通しで、決済・金融事業への成長投資の原資を確保する狙いがある。KDDIにとっても、auサテライトグロース戦略における「金融+通信+ライフデザイン」の延長線で連結子会社化までは目指さず、ファイナンシャル・リターンを確定させる意義は大きい。両社にとってこのディールは、保有資産の戦略的入れ替えとして位置づけられる。


(参考)業績ハイライト | 株式会社カカクコム





4.社員クチコミから見る当事者3社――「ユーザーファースト」「広告で稼ぐ」「成果アピール文化」


ここからは、ワンキャリア転職に寄せられた社員クチコミから、カカクコム・デジタルガレージ・LINEヤフーの「現場の温度感」を見ていこう。なおカカクコムは投稿数が限られるため、ピンポイントの引用とする。

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